成年後見制度は、①自己決定権の尊重②残存能力の活用③ノーマライゼーション④身上配慮義務⑤アドボカシー(代弁)などを基本理念にしています。従来の禁治産・準禁治産制度は、家産の保護という側面が強かったのに比べて、成年後見制度は、民法858条で規定されるように、本人の意思尊重と身上配慮義務を定め、本人に判断能力の弱さがあっても、地域社会で本人らしい生活を送れるように、制度や手続きを利用しやすいようにサポートしていくことが求められています。本人らしい生活をまもるためには本人の意思が尊重されることは当然ですが、その配慮の範囲は、生活の維持、住居、医療に関する事項など生活支援全般に及ぶことになります。また、介護保険や社会福祉法の改正などにより、福祉サービスが利用契約に基づくものへと転換しました。このような契約を結ぶにあたり判断能力が十分でない方には、成年後見人は不可欠となっています。
市民後見人とは
日本は、高齢化社会の到来や社会福祉の契約制度の導入などにより、認知症高齢者や障害者等の成年後見人の需要が急増しています。2000年4月に成年後見制度ができて、以前は配偶者や親族という身内に限られていたものが、第三者による後見が可能となり社会的受け皿が増え「成年後見の社会化」が実現しました。現在、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職が後見人として活躍し、後見人の数は年々増加していますが、残念ながら今後の認知症高齢者等の需要に対してその数は追いついていけない状態です。
そうした中、きたいされているのが、第三者後見人としての市民後見人です。子育てを終えた主婦や定年退職した人等のいわゆる「第二の人生世代」の市民がこれまでの知識、経験や、人脈などを活用して社会貢献型の市民活動として取り組んでいこうというものです。成年後見制度の基本理念のひとつであるノーマライゼーションは、認知症高齢者や障害者がその地域で普通に生活できることです。今後ますます成年後見制度の理解が市民に浸透し、認知症高齢者や障害者等の生活を地域社会が見守り、支えていく仕組みが定着することを願っています。
法人後見とは
成年後見人は個人として受任するものと法人格を有する法人が受任するものと二種類あります。法人後見は、組織として後見人になることができるもので、家庭裁判所が認めた法人が行うことができます。個人で後見人を受任している場合は、後見人の死亡や病気による入院など何らかの事情で後見事務ができなくなることが想定されますが、法人後見の場合は、組織で担当しますので後見事務が中断するという事態は避けられます。mた、法人内に多様な専門職を抱えていることが可能で、専門性を発揮しやすいことをはじめ、虐待が疑われ、複合的な問題を抱えるご家族への対応が迫られる事案や離島やへき地等の後見人を担う専門職が極端に少ない地域での事案への対応が期待されます。